Q:Mozillaの独自機能と言われれば、タブブラウジング、ポップアップ禁止、統合検索などが思い浮かびます。次は何でしょうか。
現在、プラットフォームとしてのMozillaを開発中で、いま最大の努力を傾けているのがWebサービスの分野です。
Firebirdの売りの1つは、エクステンション、つまり拡張機能ですね。これを使うことで、どこで何をしているユーザであっても、ブラウザを自分用にカスタマイズできます。エクステンションはブラウザのアドオンです。これを書くツールとして、柔軟性の高い、使いやすいXULツールキットを用意しています。エクステンションは、ありとあらゆる方面でブラウザの機能を強化します。すでに150を超えるエクステンションがhttp://extensionroom.mozdev.orgに登録されていて、さらに多くが開発中です。毎週、4つか5つが新登場してきています。私たちもこうした労作をつぶさに見ていて、これはと思う新機軸があれば、どんどん取り込んでいくつもりです。
私自身にもいくつか気に入ったエクステンションがありますが、誰もが自分のMozillaバージョンを、自分だけの必要に合わせてカスタマイズできるというところが、エクステンションアーキテクチャの真の価値でしょう。
Googleツールバーは驚異的ですね。あれだけの機能を詰め込んでいるのに、ダウンロードサイズ(110K)はIE Googleツールバー(400+K)の4分の1です。それに、検索項目のテキストがページ中でハイライトされますから、ページをざっと見ていって、すぐに見つけられます。使用されている言語をボタン一発で認識して、そのページを英語に翻訳してくれるというのも、Mozillaのような世界的プロジェクトに携わっている身にはありがたい機能です。たとえば、フランスのDaniel Glazmanがコンポーザで何をやっているか知りたいときなど、私は「translate to English」ボタンをよく使います。限界はありますが、かなりのことがわかります。
RSSReader Panelの簡単明瞭さもいいですね。ブックマークに簡単にフィードを設定できます。XMLフィードタグリンクをブックマークにドラッグしていくだけで、新しいフィード設定が完了します。ほんとうに気に入った少数のフィードから始めるという発想もいいと思います。XULchannelにしろ、ほかのRSSリーダーにしろ、フィードのリストがだんだん膨大になっていって、あれに分け入っていくのはなかなか苦労です。とにかく、私のブラウザを乗っ取って別のアプリケーションを作ろうなんてしないのがありがたいです。普通のブラウジングに戻りたいと言えば、すぐに引っ込んでくれますからね。
もう1つ。欲しい本がわかっていて、それを探して買いたいというなら、Mozilla Amazon Browser(MAB)が最高の方法です。ユーザーが何かをしたいというとき、Gecko WebサービスとXULの組み合わせほど速くて便利なものはありませんが、その典型がMABと言ってよいでしょう。私はゴルフ本に目がなくて、もういまでは手慣れて、見つけて注文するまで20秒ですよ。Amazonの通常サービスだと、20秒じゃ、ホームページの半分もロードできればいいところでしょう。探してチェックアウトまでするなんて、とてもとても。
Q:一部報道によれば、Mozilla 1.5はメジャーリリースではなくて、むしろバグフィックスだとのことですが……。
すべてのテクノロジー更新は、漸進スケジュールで定期的に出すようにしています。そのほうが、使用したり配備したりするバージョンに柔軟性ができて、ほかの方々にも都合がよいようなので。で、四半期ごとにマイルストーンを、と思っています。
(バージョン)1.4は、Netscapeのほか、IBM、Red Hat、その他で広く配備されています。Mozilla 1.5には、1.4に対する約1,000のバグフィックスと変更のほか、メールとコンポーザのスペルチェックなど、2、3の新機能が取り入れられています。ここしばらく強い要望がありましたのでね。
1.6も、もう少しで第4コーナーを曲がるというところです。いろいろな機能が1,000以上増え、バグフィックスもあり、漸進的改良も加えられています。
四半期単位のリリーススケジュールというのは、プロジェクトの指針ともなっているオープンソース原則の1つ、早期かつ頻繁にリリースせよ、ユーザからのフィードバックに耳を傾けよ、にも合致しています。
Q:AOLがInternet Explorerの使用を計画していて、基盤としてのMozillaから離れるようですが、Mozillaの将来をどうご覧になっていますか。
前途洋洋です。1つの企業の独占的ソリューションに縛られるというのは、長期的には大幅なコスト高になります。それに気づく企業が増えてきているのではないでしょうか。いま、さまざまな企業がビジネスアプリケーションの問題解決をMozillaテクノロジーに求めて、私たちと協力関係に入っています。いずれもMozillaのコードベースで協力し、できれば標準を使用するが、標準がない場面ではそれを拡張するというスタンスです。こうした多くの方面からの努力をまとめ、整理するための資金的裏付けもあります。視界は良好で、勢いも出てきています。
Q:AOLと提携していた頃に比べ、いまのほうが自由ですか。リソース面ではどうでしょう。
数多くの機会に注目しています。基本的に、ここ4か月は生まれたての企業のつもりでやってきていまして、事業を立ち上げ、テクノロジーを成長させ、配備してもらう機会を探っています。
Q:Mozillaを支援している企業は、AOL以外にはどこでしょうか。
いまは、財団結成時のプレスリリースにあった以上のことは、お話しできません。いろいろな企業に声をかけていまして、寄せられる関心と支援はものすごいものです。大企業からの大口寄付が予算に組み込まれるまでには時間がかかりますし、なおいっそうの努力が必要ですが、そう遠くない時期に、大口寄付などについて何らかの発表ができるでしょう。
Q:MozillaとMozillaベースブラウザのマーケットシェアは、どの程度と予想していますか。
その点については、いま、調査パートナーと共同で作業していまして、いいデータが得られるものと期待しています。Mozillaの受け入れ状況は、国によっていろいろです。たとえば、ドイツでは、マーケットシェアが非常に大きいですね。Mozillaは99を超える言語と方言で出荷されていまして、これは私たちの誇りです。1.5から始めたCD配布計画も順調にいっています。
1.0がリリースされたのが、1年半前になります。あれから、Mozillaの採用状況は上向きですし、いまも高水準を維持しています。四半期ごとにマイルストーンがリリースされ、マスコミに何か出るたびに、新しいユーザが増えます。多くのMozilla支持者の間では、FirebirdとThunderbirdがもうデフォルトのクライアントになっていまして、これらの1.0が出る頃には、もう完全離陸となるかもしれません。
Q:Mozillaユーザのプラットフォーム別の内訳はわかりますか。
ほぼ15%がLinux、7%がMac、残りがWindowsです。MozillaはLinuxの主要ディストリビューションのほとんどで出荷されていまして、そちらで大きな支持を受けています。コードが15ものプラットフォームの最新ディストリビューションに移植され、最小ビルドはCompaq iPAQのARMプロセッサで動作しているなんて聞くと、私自身がびっくりです。
Q:Galeonの実装は気がきいていますね。ウィンドウが開いている状態でシャットダウンすると、そのウィンドウが保存され、Galeonを再起動したとき自動的に開いてくれる、というやつ。Mozillaでも、何かその方面のことを考えていますか。
mozdevのエクステンションとしてすでにあると思いますよ。私はやったことがありませんが、ちょっと試してみましょうか……。
セッションセーバ:Firebirdが手動で閉じられるとき、ロードされているタブとその履歴項目を記憶しておいて、次回起動でそのタブと履歴項目を復元する。保存されたセッションは、[File]メニューによりいつでも手動で復元もしくは更新できる。
これの関連機能で「リコール」というのもあります。
リコール:ブラウザセッションをローカルハードディスク上のファイルに保存しておくことにより、作業をリコールする。ブラウザが(あるいはオペレーティングシステムが)クラッシュした後、Mozillaを再起動すると、クラッシュ以前に開いていたウィンドウ/タブがプルダウンメニューの形で表示され、開いていた1つ以上(あるいは全部)のページに戻ることができる。
これを見ても、ブラウザプラットフォームとしてのMozillaの威力がおわかりでしょう。他の開発者はそこに機能を追加できますし、ユーザはブラウザをカスタマイズして、目新しいいろいろな機能を取り込むことができます。
Q:Apple社はSafariブラウザにKHTML(Konquererの一部)を使うことにしたようですが、Apple社からMozillaへのアプローチはなかったのですか。
ありました。Mozillaの評価をしたようですが、残念ながら、私たちの最大の長所である最高の標準サポート、レイアウトエンジンとHTML編集の統合、クロスプラットフォームサポートや、その他いくつかの分野は、当時のApple社の評価基準では重視されていなかったようです。でも、聞くところでは、Apple社はいまそうした分野に一所懸命努力を注ぎ込んでいるようで、何年も前の私たちの足跡をたどっているみたいです。
Q:次の大きなブラウザ市場は携帯電話、PDA、ハンドヘルドデバイスです。Mozillaはそのどこかで使われていますか。
minimoプロジェクトというのがあります。来年はこのプロジェクトがちゃんと立ち上がって、大きく注目されるものと期待しています。ラスベガスのCOMDEX 2003では、MozillaをLinuxキオスクや小型デバイスに使用している、あるいはその予定であるという多くの開発者に出会いました。そうしたデバイスでは、低コスト、使用料の継続支払い不要、高信頼性、Web上の多彩なコンテンツとの整合性、などが不可欠の要素ですからね。私自身もここ数週間、iPAQでminimoを動かしていて、ニュースや、頻繁に更新されるコンテンツをWebから読むのにたいへん重宝しています。この開発作業の一部には、ある大手携帯電話ベンダからの資金提供があります。
Q:いま何人くらいの開発者がMozillaに積極的にかかわっているのでしょう。
もちろん、技術が成熟してきて、開発プロセスの自動化への投資が実を結びはじめると、少数の人間でより多くのことができるようになります。しかし、昨年7月末にAOLが直接的な開発支援を打ち切ったときは、「CVSコミッタ」の数はほんの15%ほどしか減りませんでした。これには、多くの人が驚いたのではないでしょうか。
CVSチェックインコントリビュータの数
2001年12月〜2002年3月:165
2002年4月〜2002年7月:161
2002年8月〜2002年11月:152
2002年12月〜2003年3月:122
2003年4月〜2003年7月:104
2003年8月〜2003年11月:88
最近4か月では、変更をコミットする人間こそ88人ですが、これ以外にバグにパッチを当てる人が何百人、ソースコードをダウンロードして眺めたり、いじったりする人が何千人、毎夜のビルドやマイルストーンビルドのテストの手助けしてくれる人が何万人といるわけです。私どもは現在でも、最大にして、最高速で進行しつつあるオープンソースプロジェクトの1つです。多くの企業や個人が開発やQAを通じて強力にサポートしてくれています。
Q:IE専用として設計されているWebサイトもかなり多いのですが、これをMozillaで完全にレンダリングするために何か努力されているんですか。
私どものバグシステムでそうしたサイトを追跡しています。標準を採用せず、独自方式でコンテンツを提供しているサイトには、ボランティアグループが福音を説き聞かせるようにしています。
成果もあがっていて、Web標準でコンテンツを作成すれば、速度と保守費用の面で大きなメリットがあることに気づく企業が増えてきました。Netscape DevEdgeサイトにも、そうしたメリットやその他の情報を強調する記事や証言がいくつか掲載されています。
Web標準に準拠しているコンテンツだと、レンダリング速度が劇的に向上するという研究をいくつか見たことがあります。ブラウザのレイアウトエンジンが標準モードから外れ、変則モードに堕すると、情報のプレゼンテーションがスローダウンします。変則は無数にあるわけで、そのなかのどれが該当するかをいちいち判断しなければなりませんから、スローダウンは当然ですね。新しい標準に準拠しているコンテンツなら、ずっと速く解析し、表示できます。
この2年間、私どもはこの分野でほんとうに長足の進歩を遂げたと自負しています。多種多様なコンテンツについて、いっそう大きな支持を得ています。
バグの報告があるたびに、その性格を調べ、どうすればMicrosoft社が実装した変則だの独自機能だのとの間に整合性を生み出せるかを考えます。
Q:Mozilla Calendarプロジェクトの調子はどうですか。
このプロジェクトで開発しているXULアプリケーションには、いいフィードバックが返ってきています。しかし、将来的にカレンダサーバ標準の利点を生かすには、バックエンドのカレンダサポートをもっと充実させないとなりません。来年はこの分野の開発活動に力を入れようと思って、いま計画を練っているところです。
Q:Mozilla 2.0のリリースはいつごろになりそうですか。
いまのところ、これまでのご質問にあったいろいろなプロジェクトで手一杯の状態です。2.0リリースがどんな内容になるのかとか、それにはどんな作業が必要かとか、そこまでまだあまり頭が回っていません。
Q:バージョン2は、独立アプリケーション(Firebird、Thunderbird、その他)の集合体になるのでしょうか。それとも、統合スイートに?
とりあえず、コアはGeckoコンポーネントで、2.0はそれのバージョン番号といった感じで考えています。それと、このコアの上に組み立てられたアプリケーション群のね。このアプリケーションには、もちろん、統合スイート、Firebird、Thunderbirdなどへの最新のアップデートが含まれることになるでしょう。
Q:Mozillaスイートを望む声と、独立アプリケーションを望む声があると思いますが、どの種の組織がどちらを望んでいるんでしょう。
さまざまなニッチにさまざまなニーズがあります。
すでにMozillaを導入しているか、導入を考えているいくつかの大企業や大組織に話を聞いてみると、Mozillaの安定したフルスイートは、そうした企業のニーズによく応えられる低コストのソリューションになっているようです。その種の組織では、人員の訓練やアプリケーションの配備に相当の費用がかかりますから、フルスイートでUIがあまり変化しないとなれば好都合です。その点が重視されているわけです。
一方で、できるだけ最先端に位置したいという大企業もあって、そういうところではFirebirdとThunderbirdの配備を始めています。この鳥たちが1.0に成長するころには、その傾向がいっそう顕著になっているでしょう。
高コストと、セキュリティ懸念、それにオペレーティングシステムの次期メジャーリリースが大幅に遅れそうであること――これが私どもにはチャンスとなります。Mozillaの採用は、今後2年間で大幅に増えると思います。発生するギャップを、私どものテクノロジーで埋めていく。それが私どもの計画であり、スイートを巡る意思決定の大本にその計画があります。単純さ、速度、UIの改善を中心とするスタンドアロンアプリケーションの再設計も、同じ理由によります。
すべてのコアとなるのがGeckoです。これは十分にテストされた技術であり、Web上の大半のコンテンツをレンダリングできますし、標準をサポートするという点では、どのブラウザにもひけをとりません。今後は、あらゆる種類のアプリケーションがGeckoの上に構築されることになるでしょう。フルスイートは、Geckoの上に構築されて広く配備された最初の主要アプリケーションでした。次はFirebirdとThunderbirdです。以後、さらに多くのアプリケーションが続きます。
Q:MozillaとOpenOffice.orgが提携するというのは、当然のように思えます。どちらも、各種プラットフォームで動作するデスクトップ向けアプリケーションスイートですから。この2つのプロジェクトに合併の可能性はないのでしょうか。
OpenOfficeの人々とはよく話をしますし、アプリケーション間の相互運用や統合の可能性も探っています。しかし、2つのプロジェクトの合併計画はありません。先ほど、同じオープンソースのスペルチェッカを使用するという話をしましたが、それはいま探っている可能性の1つにすぎません。きっとディストリビューション面でも協力できる場面はあるでしょう。最近、オーストラリアと中国で大配備計画の発表がありました。これなども、2つのアプリケーションを組み合わせれば、いかに強力なソリューションが得られるかを示すよい例でしょう。どんな大組織のニーズにも応えられます。
よい統合こそ、多くの人々の望むものだと思います。2つの、ともに成功しているプロジェクトを合併することで何が成し遂げられるのか。その点は、私にはよくわかりません。